【珈琲抽出理論①】粉の挽き目について

こんにちは。後珈琲探訪記です。

 

以前、ハンドドリップの始め方の記事で「味の調整方法については後日記事にしたい」と書きました。↓

bubuyamacoffee.hatenablog.com

これから数回に渡って、コーヒーの味わいを調整してお好みの味を抽出する方法について、【珈琲抽出理論】として書いていきたいと思います!

 

 

初めに

シリーズを最後までお読み頂くと、

  • 「コク深い/サッパリ」
  • 「酸味主体/苦味主体」
  • 「香りが溌剌としている/奥ゆかしい」
  • 「口当たりが重い/軽い」

など、お好みの味のコーヒーを抽出する方法がわかるように構成したいと考えております。

 

変化がハッキリと実感できる、重要な4つの項目に絞って紹介したいと考えています。

 

今回紹介する「粉の挽き目」は特に少しの変更で味わいが大きく変わる、重要な項目です。ハンドドリップだけでなく、マシンで抽出される方も調整できるかと思いますので、ぜひ皆さまご覧ください!

 

酸味/苦味のバランス

 

挽き目を調整すると、「酸味/ 苦味のバランス」を調整することができます。前提となる知識を初めに述べたいと思います。

 

(法則1)「挽き目が細かいほど、多くの成分を抽出できる」

→粉の表面積が大きく抽出効率が良いため、お湯に溶けこむ成分の総量が多くなります。

 

(法則2)「酸味成分は溶け出しやすく、苦味成分は溶け出しづらい」

味を構成する成分は「酸味→甘味→苦味→渋味・雑味」の順番で溶け出しにくくなっていくと言われています。実際に抽出の前半・中盤・後半でカップを取り替えて3つを飲み比べてみても、そういった印象でした。

 

よって、例えば粗挽きで抽出した場合、酸味成分は溶け出ているけれど、苦味成分がまだあまり出ていないコーヒーが出来上がります。

 

その場合、「粗挽きだと苦味を含めた様々な成分があまり抽出されないので、酸味が明確に感じられる」ことになります。「粗挽きだと酸味成分が多く抽出される」わけではありませんのでご注意ください。

 

以上を大雑把にまとめると、挽き目が粗いと酸味寄り、細かいと苦味寄りの味わいになると言えます。

 

一般的に、酸味成分が過多で他の成分が乏しい抽出を「未抽出」、苦味・渋味・雑味など好ましくない成分まで出てしまった抽出を「過抽出」、その間を「適正抽出」と呼びます。使い勝手の良い用語なので覚えておくと便利かと思います。

 

(補足)

どの程度の味わいバランスから未抽出/過抽出といった絶対的な指標はありません。SCA(スペシャルティコーヒー 協会)では「適正抽出の収率は18~22%」としているようです。収率はTDS(総溶解固形分)測定器などを用いて計算すれば割り出せるようです。興味のある方は調べると面白いかと思います!

 

質感

 

質感とは口当たり飲み口のことで、「ボディ」「テクスチャー」などとも呼ばれます。質感が「重い/軽い」「複雑/クリアー」「滑らか/荒い」など多様な表現をします。

 

普段あまり意識していない方は、わかりづらいかと思います。その場合、牛乳と水を飲み比べてみると明確に実感できるので、とてもオススメです!

 

水に比べて牛乳は重厚で、まとわりつくような粘度があり、透明感はなく複雑な印象を感じて頂けると思います。

 

深煎りコーヒーと浅煎りコーヒーも、質感が大きく異なります。同じように抽出しても感じる、深煎りの重厚なコク・浅煎りのスッキリとした透明感。ぜひご確認ください!

 

法則に戻ります。

細めの挽き目で抽出すると、重厚感やコクが出ます。上手く調整すると複雑さがあり滑らかなとても心地よい舌触りになります。細かくしすぎると、ザラつきや粉っぽさが出てしまいますので調節が必要です。

 

粗めの挽き目で抽出すると透明感がありスッキリした印象になります。上手く調整すると瑞々しく軽やかな心地よい飲み口になりますが、粗く挽きすぎると水っぽさやスカスカした口当たりになってしまいます。

 

特に浅煎りコーヒーは質感が変わると印象がガラッと変わるので面白いかと思います。細めの挽き目でコクや複雑さを上手くだすと、浅煎りの華やかな香りがありながら「飲みやすいマイルドなコーヒー」に仕上がります。

 

粗めの挽き目で上手く調整すると、紅茶のような軽い口当たりと透明感が感じられ、「コーヒーらしくない軽やかな一杯」になります。ぜひお試しください!

 

(補足)

ハンドドリップやペーパー式のコーヒーマシンに適した挽き目は一般的に「中細挽き」と言われています。これも厳格な定義はなく、だいたい「グラニュー糖ぐらいの大きさ」とされています。

 

当記事で「粗め/細め」と言っているのも中細挽きと比較して「細め/粗め」といったイメージです。一般的に「粗挽き」と言われている挽き目はザラメほどの大きさで、粗すぎてペーパードリップではほとんど味が抽出できませんので、ご注意ください!

 

濃度

挽き目が粗いと濃度が薄く、挽き目が細かいと濃度が濃くなります。

 

濃度が薄いと、未抽出や粉の挽き目が粗いのとはまた違った、物足りなさや紙っぽさがあります。

 

「濃度が低いコーヒー」「質感が軽快なコーヒー」「未抽出寄りのコーヒー」で飲み比べても面白いです。(その場合、他の抽出項目を変化させて、できるだけ対照実験に近づける必要があります。)

 

まとめ

 

今回は、挽き目と明確な相関がある、「酸味/苦味のバランス(未抽出/過抽出)」「質感」「濃度」を紹介しました。

 

しかし、実際は挽き目を変えると起こる化学的な変化はより複雑で、今回触れていない変化も確実に起こっています。

 

文献を見ていても、「コーヒーの風味を形成する成分はなんなのか」「どういう条件でどれほど抽出されるのか」という化学的な研究はまだまだ発展途上のようです。

 

なのでぜひご自身の五感で、どう変化するか観察してみてください!ここに書いた以上の発見があると思います!

 

少しマニアックな回が続きますが、コーヒーの魅力の一つである「追求しがいのある複雑さ面白さ」をお伝えすべく尽力しますのでぜひお付き合いください!

 

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最後までお読み頂きありがとうございました。

後珈琲探訪記

 

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参考文献

・旦部幸博『コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか』、講談社、2016年

・堀口俊英『THE STUDY OF COFFEE』、新星出版社、2020年

・三神亮『Coffee Fanatic 三神のスペシャルティコーヒー 攻略本"コーヒー・ファナティクス"(概論/焙煎/抽出)』、文芸社、2022年

・田口護・旦部幸博『コーヒー美味しさの方程式』、NHK出版、2014年

・全日本コーヒー商工組合連合会『コーヒー検定教本』(第3版)、2021年